概要(背景や目的、課題などについて)
地域に愛され明治から続く老舗の鰻屋。敷地内には、客席店舗と和風個室のある別棟、や施主様住居が建っており、建て替えにより店舗と施主様住居及び賃貸マンションの構成とにするのが今回のミッション。「以前の建物のイメージを残す」「庭と水辺がセットになっている和風個室を再現」「家族や地域が交流できる店づくり」「既存の部材をできる限り使う」という施主様の想いを叶えるべく、一大プロジェクトがスタートした。
再現と創造で、歴史を紡ぐ外観
いくつかのプランの中から施主様が選ばれた外観は、両サイドを支える壁や格子といった以前のお店の雰囲気やイメージを踏襲したデザイン。設計に先立ち、建て替え以前のお店の外観や内観についてはカメラマンが写真撮影して冊子にまとめており、プロジェクト関係者で事前に共有することで再現と創造の礎とした。看板は既存のモノをリメイクして再利用。マンション外壁中央部にマリオンルーバーを採用し、バルコニーの連続性に変化を持たせることで、近代的でありながら老舗の雰囲気や空気感を醸成している。
個室には川辺の情緒を表現
鰻が「川魚」として食されることから、情緒あふれるお庭に川のせせらぎを想起させる個室を7室設計した。RC構造に和室を構成する木材などを用いることは挑戦的なアプローチであったが、以前のイメージを残しつつ高級和室を完成させた。課題となったのは、消防法の制約。こちらは特殊なスプリンクラー設備を取り付けることで安全に仕上げた。1階店舗客席は親しみやすい町家をモチーフにした空間を演出。また、室内には既製品ではない部材も多く使用されており、設計者自らが長野の山中にでかけて買付をしたことも。
設計者が感じた、やりがいのポイント
以前の店舗で使っていたモノを再利用することが念頭にあったため、解体も「手壊し」で進め部材などを保管。丁寧な作業が実を結び、これまで大切に使われてきた照明やベンチ、台座などをクリーニングした後に再活用したことで、老舗の雰囲気を醸し出すことに一役買っている。設計者としては、1000㎡いう大規模かつ老舗店の店舗建て替えということもあり、苦労もあったがそれ以上のやりがいを感じた一大プロジェクトとなった。
設計者 株式会社リンクス・ビルド 一級建築士 島田 義之
設計協力 ナチュラルデザイン一級建築士事務所 一級建築士 佐藤 修 様
物件詳細
住所 | 埼玉県さいたま市浦和区岸町7-1-3 |
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構造 | RC |
階数 | 3階 |
種類 | 店舗 |
交通 | JR東北線 浦和 6分 |